ミライへのタネ
-Pay it Forward-
PROF'S LIFE

大学講義の裏側公開!講義はどう準備してる?

Sakura
Sakura
セメスター(学期)が始まって1週間経ちましたね。今週からは本格的に「対面講義」も復活!

Captain
Captain
多くの学生・クルーがキャンパスに戻ってきたね。2年ぶりに賑やかになってきた。

Sakura
Sakura
ところでCaptainは、講義でしか大勢のクルー(学生)の前に出る機会はないですが、いつもどうのように講義の準備してるのですか?

Captain
Captain
そうだね、色々やってるよ。じゃあ今日はそれについて話していこうか。

クルー(学生)のみなさん、キャンパスへおかえり〜!

僕も久々に大勢の前で講義を行うことになりました。

昨日の講義では、学長とNHKのカメラが僕の講義に参加するという面白いこともありました。

オンライン講義時は、画面越しでしかやりとりすることがなく、僕の担当科目は受講生がひとクラス160〜250人を超えるので、画面に小さく映るクルー(学生)を相手に講義を行っていました。

ある時、コンビニでクルーに偶然出くわした時、「Hiro先生・・・本物ですか?」なんて言われたこともありました。

「・・・本物です。」

今年度は、そんな「オンライン基本」から「対面基本」に戻りました!

それにちなみ、今日は普段絶対に見ることが無い「大学教員はどのように講義を準備・運営しているのか」についてお話ししたいと思います。

これはあくまでも「僕」の例であり、他の先生には他の先生のやり方がありますので、ご理解ください。

セメスター開始前

僕の大学は、Semester Break(学期休み)が大体8・9月と2・3月に設定されています。

「学期休みが4ヶ月もあるの?」と驚かれた方・・・。

いやいや・・・その休みは「学生用」であり、教職員は普通に年間通してフルで働いています

そんな、Semester Breakの「講義がない」期間に行う講義準備は、次のようなことです。

コースの構成づくり、教科書の選択、講義資料の作成・修正、ゲスト・スピーカーのアポ取り、課題・評価基準づくり、Learning Management System (LMS)と呼ばれるプラットフォームの設定など。

新しい科目を教える際は、約2ヶ月のSemester Breakの内1ヶ月強を、講義資料づくりに使うこともあります。

そして、セメスター開始が近くなってくると、以下を行います。

Teaching Assistant (TA)のリクルート

うちの大学では、TAシステムがあります。その科目にもよりますが、学部生か大学院生を1〜2人、その講義のアシスタントにつけることができます。

最近は僕のゼミのメンバーからお願いすることが多いですね。

Assistantと名前はありますが、僕のコースでは、”Teaching Associate”と位置付け、Teaching Teamとして一丸となり、コース提供をするということをしています。

TAのオリエンテーション

僕の教える科目は、履修者が一番良い形で勉強できるよう、複雑に作り上げられています

そんな講義を作るには、TAは必要不可欠な存在であり、講義前・講義中・講義後に多くの準備が必要になります。

このTAオリエンテーションではTAの仕事内容、役割分担、僕が求めるレベル、コミュニケーション方法、学生や教室の管理方法、必要になるスキルを伝達し、TAが自信を持ってセメスターを迎えられるようにします。

TAと共に「教室周り」

講義によって使用する教室は異なります。

教室が違えば、履修者が教壇を見る目線や、教室環境を感じる感覚が異なってきます。

座る場所によっても、教壇やスクリーンがどう映るかが変わってきます。

この「教室周り」は履修者の目線から、教壇で教員・TA、そしてスクリーンなどがどう映るのかを事前に確認するものです。

これをした上で、それぞれの席に座っている履修者に講義を「できるかぎりベストな形」で届けられるのかを考え、準備します。

セメスター開始後(毎週)

一旦、セメスターが始まると、業務内容も「準備」から「運営」に変わります。

毎週行うこととして、講義で使用するPPTを前述のLMSにアップしたり、履修者のメール対応をしたりする他、以下のことを行います。

TAと週1のミーティング

僕のコースでは、TAが履修生から受けた質問で「よく聞かれた質問」や「答えられなかった質問」などがあれば、ここで情報共有をし、対策をします。

また、クラス内でアクテビティを行うときは、TAが教壇に立ち、ファシリテートをするのですが、このミーティングでは、TAのリハを行い、どうすればよりよく履修者に指示を出せるのか、どのタイミングで何を行うのか、など次の講義の動きを細かく調整します。

自分のリハ

僕が8年ほど前、オーストラリアの大学で教壇に初めて立った時から欠かさず行っていることですが、講義の前には必ず自分のリハを入れます

以前はTAを入れて行っていたのですが、多忙になってしまい、TAを入れての時間調整が難しくなってきたので、今は一人で声出しの「通しリハ」を入れます。

このリハをし、より良い説明の方法がないのか、もっとわかりやすい例を入れることはできないのかなどを確認した上で、毎回本番を迎えています。

セメスター終了時

14週間のセメスター終了時は、採点、成績づけ、TAとの「振り返りミーティング」などを行うのですが、それ以外に以下のことを行います。

「TA虎の巻」の改訂

TAは学生なので卒業をしていきます。そのため、一緒に働けるのは、長くても1年〜2年弱くらい。その後、また新しいTAを雇用することになります。

僕のように「複雑な作り」をしているコースでは、毎回全てのタスク・動きを教えるのは一苦労。

そこで、この「TA虎の巻」を作り、アップデートしておくことで、次にTAになる学生が「マニュアル」として使えるようになるのです。

数年前、最初のバージョンをTAに作ってもらってから、オンライン講義やハイブリッド講義(対面とオンライン混合)に授業形態も変化しているので、毎年更新をし、前述のTAオリエンテーションで新しいTAに提供しています。

さいごに

細かいところを含むと、まだたくさんあるのですが、大枠はざっとこのくらいです。

以前、この話を大学職員の方や前のTAにした際、「なんでそこまでするの?」と驚かれたこともありました。

僕は「そこまでしている」と思ったことはないのですが、僕がこれらを行う理由を言えるとしたら以下の2つです。

毎年の「同じ科目」の講義は、僕にとって「繰り返し」であっても、その講義を受講するクルー(学生)にとって、その時、その場所で、そのトピックの講義を僕が教えるのは、基本「人生で1度きり」ということ。

僕の講義を受けるクルー(学生)が、その講義を通し、少しでも「自分の興味のタネ」を見つけ、人生を豊かにするきっかけを受け取ってくれたらと願うから。

以前、音楽でステージに立たせていただいていたことがありました。

その時、その曲の演奏は、自分にとって「繰り返し」であっても、オーディエンスにとっては、それを聴く瞬間は1度きりということを自覚することが重要だということを気付かされることがありました。

その気づきが、今舞台が「ステージ」から「教壇」へと変わっても、僕の背中を押し続けている気がします。

そのため、どれだけ仕事が忙しくなっても、今回述べたことを続けています。

逆に、自分がこれらを続けられなくなった時、堕ちていくんだろうなぁとも思っています。

そうは言っても、「僕が目指す講義」はまだまだ発展途上です。

最高の旅をクルー(学生)に届けられるようにまだまだ試行錯誤します。

このセメスターもTAとクルーの皆さんの力を借りながら、一つ一つ良いものにしていけたらと思います。

Von voyage!

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