ミライへのタネ
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ACADEMIA

日本にいる外国人労働者の三大苦悩

少子化と労働人口の減少が深刻化する中、日本ではこれからますます「外国人労働者」の存在が不可欠になってきます。

実際、国の制度も外国人の受け入れにシフトし始め、企業現場でも外国人社員を見かける機会が確実に増えてきました。

技能実習制度の見直しや特定技能制度の拡充、高度人材の受け入れ促進など、日本全体が多文化共生へと向かい始めています。

僕の大学は、学生の半分以上が留学生という国際的な環境にあります。

彼らは日本語を学び、日本社会に適応する努力を重ね、そして卒業後は日本の企業に就職していきます。

彼らの多くは「日本が好きだから」「ここでキャリアを築きたいから」と心から願っている人たちです。

でも、そんな彼らですら大学を卒業し、日本の職場に足を踏み入れた時、想像以上のカルチャーショックに直面するんです。

優秀で、誠実で、日本が大好き。

それでも口から出るのは「なんでこんなにしんどいんだろう」という言葉です。

僕自身も、カナダ、ロシア、アメリカ、そしてオーストラリアで「外国人」として生活した経験があります。

だからこそ、異国の地で働くことの楽しさと同時に、「見えないルール」や「理解されないもどかしさ」がどれほど心を疲れさせるのかを、身をもって知っています

ただの言葉の壁ではなく、文化、制度、そして人間関係。目に見えにくい「見えない壁」が、知らないうちに心と体にプレッシャーをかけているんです。

それでも日本が好きで働きたいという彼らに、そして彼らを必要とする日本企業へのメッセージとして、この記事では、そんな「しんどさ」の正体に迫っていきます。

この現実に光を当てることで、誰もが少しずつ前向きに歩み寄るきっかけになればと願っています。

1. 言葉だけじゃない「文化の壁」と、その見えない圧力

「英語は話せる。でも、通じない。」

これは、ある外国人エンジニアの言葉です。英語が通じる職場でも、なぜかコミュニケーションがかみ合わない。そんな違和感の正体は「文化的な期待」のズレにあります。

たとえば、日本の職場では「察する文化」が根強くあります。

明確な指示がなくても「空気を読む」「自分で気づく」ことが求められる。

これは、明文化されたルールではなく、行間に潜む「常識」です。

でも、その「常識」は、他の国から来た人には非常識であることも少なくありません。

あるカナダ出身のエンジニアは、「ミーティングで質問したら、空気を読めていないと思われた」と語ります。

逆に、黙っていたら「理解していない」と思われた。

そんなジレンマの中で、次第に会議の発言を控えるようになったといいます。

さらに厄介なのは、こうしたズレがあっても誰も教えてくれないこと。

「あの人はちょっと変わってる」や「日本ではこういうやり方だし」と思われるだけで終わってしまう。

つまり、失敗から学ぶチャンスすら与えられない空気があるのです。

語学スキルの高低ではなく、文化的期待値への理解と適応が求められるこの構造は、想像以上に複雑で、精神的な孤立感を生みやすいのです。

2. 「いつまで経っても外の人」ーインクルージョンされない職場

「もう5年も働いてるのに、いまだに「外国人扱い」されてる気がする。」

これは、都内のホテルで働くインド出身のマネージャーの言葉です。

仕事ぶりは高く評価されているのに、重要な会議の場には呼ばれない。制度的には正社員なのに、「大事なことは日本人で決める」空気が残っている

つまり、制度上は「内側」にいても、心理的には「外の人」のままなんです。

「なんとなく仲間に入れてもらえていない」この感覚は、数字には表れません。

でも、それが続くと、やがて当事者は「もう意見を言うのはやめよう」と感じるようになります。

こうした「表面的な受け入れ」は、逆に孤立を深める要因になります。

イベントでは歓迎され、写真も撮られ、「国際的な職場です」とPRされるけれど、日常の会話や意思決定の場では疎外感が強まる。

まさに、インクルージョン(包摂)ではなくトークナイズ(象徴化)されている状態です。

心理的安全性(Psychological Safety)が担保されない環境では、人は意見を言わなくなります。

アイデアも出さなくなる。そして、「何のためにここにいるのか」がわからなくなるのです。

それは本人にとっても組織にとっても、大きな損失です。

外国人を「戦力」として迎えるなら、心の居場所としても包摂される環境が必要です。

3. 将来が見えない「キャリアの不安」ー不透明な昇進ルート

「どれだけ頑張っても、昇進はしないと最初からわかっていた。」

外国人として日本で働く多くの人たちが直面するのが、「見えないキャリアパス」です。

たとえば、日本の多くの企業では「年功序列」「横並び文化」「社内調整力」など、目に見えないルールが昇進に影響を与えています。

スキルや実績以上に「根回し」「同調性」が評価される場面もある。

ある東南アジア出身のエンジニアは、10年日本企業で働き、リーダーシップ研修も社内テストもすべて合格していたにもかかわらず、昇進は常に後回しにされてきたと語ります。

理由は「管理職にするには、社内文化を完全に理解してから」とだけ言われたそうです。

これは、成果主義や透明性を重んじる国から来た人たちにとっては、非常にストレスフルな現実です。

また、制度的に「外国人枠」が昇進対象外だったり、昇進しても管理職として裁量が与えられなかったりするケースもあります。

つまり、どれだけ頑張っても「天井が決まっている」状態。

これは特に中小企業によくみられる現象であり、個人のキャリア開発だけでなく、組織の多様性推進の妨げにもなっています。

そんな「将来が見えない」という状況、働くモチベーションにとって致命的なんです。

まとめ

日本語を学び、日本の文化を尊重し、働き方に合わせようと一生懸命努力している姿を、僕は日々間近で見てきました。

休まず働き、感謝の気持ちを持ち、チームの一員として貢献しようとする彼らの姿勢には、僕自身も何度も学ばされました。

それなのに、なぜ彼らが「ここにいていいのか分からない」と感じてしまうのか。

「自分はまだ認められていないのかもしれない」「一生懸命やっても距離が埋まらない」——そんな思いを抱えたまま働き続けるのは、どれだけつらいことか。

これは、決して個人の努力不足ではなく、構造の問題でもあるのです。

その理由を知ることで、僕たち全員がもっと優しく、そして強くなれるんじゃないかと思うんです。

僕たちが向き合うべきは「同じにする」ことではなく、「違いを理解し活かす」こと。

今までそれを行ってきていない企業はそれが「怖い」はずです。

でも、もうそう言っていられない社会的状況も理解しているはずです。

はじめの一歩は、本当の意味で「理解すること」から始まります。

今自分の職場に外国人がいなかったとしても、彼らが入社してくるのはすぐそこまできています。

彼らと皆さんが互いに支え合い、シナジーを作り出し、発展していくことが今後の日本の企業の残された道です。

今の企業が変われば、社会も少しずつ変わっていきます。

その希望を、現場から育てていきましょう。

ほんでまず。

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